2011年12月14日水曜日

ナデジュダ号


フランスで得た体重がなかなか元に戻らないので、最近は自転車をやめて歩くようにしている。
2時間くらいとか、歩く日もある。

昨日は大さん橋に日本丸みたいな帆船が停まっているのを見つけて大コーフン。
帆船はイルミネートされていて、赤、黄、緑、青、濃ピンク・・・数秒ごとに色が変わっていく。

吸い寄せられるように近くまで行ってみると、
船首からマストのてっぺんを通って船尾まで
ぐるりびっしりと張り巡らされた小さな三角の旗が
パタパタパタ、パタパタパタ、はためいていた。
ずっと聴いていたいような、いい音。

帆船はロシアの船でした。
ウラジオストクにある海洋国立大学のナデジュダ号、
12/15(木)まで停泊予定だそうです。

2011年5月26日木曜日

baguette angel (天使の棒)


アイスランド火山灰を避ける航路にて、少し飛行機遅れたけど無事に帰国しました。

フランスを発つ日、ギターを売るためトゥール市内の楽器屋CAP Musicへ。

「私のこと覚えてますか?このギター売りたいんだけど。」
「イェース。もちろん覚えてますよ。」

ギターを上下逆さまにしたり裏返したり、水平にして遠くから見たりして、隈なくチェックして査定するムッスュー店主。

「買取よりも交換の方がレートがいいんだけど、どう?他に欲しい楽器はない?ウクレレとか?」

レジの近くのスペースには、いろんな色やサイズのコンサルティーナやボタン式アコーディオンが高く積まれている。

「う、うーん、、、欲しい楽器はあるけどスーツケースがすでにいっぱいなんです。ウクレレはもう持ってるし・・・・・そうだ!小さいグロッケンはありますか?」

ムッスュー店主が出して来てくれたのは、Bergeraultというブランドのブルーのグロッケン。Bergeraultはアンドル=エ=ロワール県内のメーカーであるとのこと(トゥールはアンドル=エ=ロワール県の県庁所在地です)。今や鍵盤パーカッションのメーカーとしては世界有数であるとのこと。

試し叩きさせてもらい、グロッケンのバチのことはbaguette angel(天使の棒)って言うんだよ、というお話などを聞いていたそのとき、しばらく前から私のやりとりが終わるのを待っていたお客さんのおじいちゃんが、鞄から何やら取り出して見せてくれる。

二つの写真。ひとつは、野っ原で大がかりな創作楽器に囲まれてひとりアコーディオンを演奏する白髪紳士の写真。ヴァイオリンが4つ並んだ大きな箱が紳士の後ろに3台。ヴァイオリンのネック部分に、長さの違う金具のようなものが設置されている。アコーディオンを持つ紳士の前にはドラムセット。左手に木琴と鉄筋が2段になったもの。右手にオルガンに似た鍵盤楽器。この、ひとりオーケストラプレイヤー紳士こそ、Bergerault社の創始者ムッスューAlbert Bergeraultその人であった。Albert氏がアコーディオンを弾くとすべての楽器が連動して音を奏でるのだそうだ。

もうひとつは、お客さんおじいちゃん本人が演奏している写真。創作楽器はAlbert氏のよりはずいぶん小ぶりだけど、やはりドラムセットを前にしてアコーディオンを弾いている。お客さんおじいちゃんPaul Gilbert氏、御年84歳とのこと。今日修理に出すため持ってきた楽器(タンバリンくらいの大きさのスネアドラムに似た太鼓)も、Albert Bergerault氏に特注して作ってもらったんだそう。「この楽器を演奏できる者は世界でもなかなかおらんよ。ウォッホッホッホ。」携帯のカメラでいっしょに写真を撮ってもらった。

というわけで、ブルーのおもちゃグロッケンは日本へ運ばれることに。出発の電車の時間がせまっていたのであわてて梱包。ムッスュー店主のアドバイス通りに、鉄の鍵盤は全部外してひとつにまとめて、本体の木の枠は衣服にはさむようにして。

シックなブルーのおもちゃグロッケンcarillon(カリヨン)。早朝パリに行く時電車の中から見えた、鏡のように静かなロワールの川面を思い出させる、キーンと澄んだ音がします。

↓お世話になったトゥールの楽器屋さんCAP Music
http://www.capmusic.fr/

↓Bergerault USA
http://www.bergeraultusa.com/

2011年5月24日火曜日

HOHNERのギター


トゥールで買ったHOHNERのギター。背中の真中にも中華っぽい模様の線が一本入っている。

これから売りに行きます。

これまでいっしょにいてくれてありがとう。

ギャンゲットのお化け柳


みんながギャンゲットと呼んでいる、夏だけオープンするロワール川のほとりのカフェ。ギャンゲットの意味は・・・こんど調べます。

色とりどりのキャミソールドレス、仮設トイレのかんじとか、ちょっと葉山あたりの海の家のような雰囲気。

真中に屋根みたいにある大きな柳の木が、強い西日を遮り、風に吹かれてゆらゆら揺れる。夜は酔っぱらった若者たちでにぎやかになる。

Une Chanson Douce

友人カップルの家に夕食に呼ばれに行く。年の離れたカップル、陽庵(ヨーアン)と麗茶視亜(レティシア)。名前の漢字は私が作っためちゃくちゃ当て字である。自分の名前を日本語で書いてくれる?と外国人から頼まれるとき、カタカナよりも漢字を書いてあげた方が喜ばれる。そのときに、「麗」はとてもとても美しいことで、「亜」はモンゴルのような広大な土地を表し・・・とか占い師のようなことを言ってあげると、さらに喜ばれる。一昨年からの短い海外滞在で私が覚えたことといえば、そんなことくらい。

前に遊びに行ったとき、ジュ・テーム、ジュ・テーム・・・目を離した隙に何回も、1時間のうちにも何回もほんとうに言い合っていた、あの熱々さはもうないみたいだけど、相変わらず仲の良いふたり。アンリ・サルヴァドールの曲の発音をレティシアに教えてもらったときからずっとかかりっぱなしだったアルバムの「Une Chanson Douce」という曲が流れて、この曲は子守唄で子供はこの歌を歌うところっと寝てしまうんだ、と目を潤ませるヨーアン。窓の外にはほんのりピンク色が残る夕焼け空が見えて、カモメがときどき鳴いた。カモメは同じトゥール市内にあるトガゼンの家の方では見ないのだけど、北側のロワール川か南側のシエール川、どちらかからやって来るらしい。

2011年5月19日木曜日

まぶしい。

マクドナルドには毎朝9時頃来るのが日課になっている。今朝は夢見が悪くなかなか起きれなかったのでかなり遅刻。年金生活者らしき常連さんのおじいちゃん達。今日も来ている。私の席からは見えないけど、今日は4人、かな。店内に響きわたる話し声。とてもゆっくりしゃべるので、すこーしだけ聞き取れる。知り合いの噂話をしているみたい。あんなに仲良しそうなのにvous(丁寧な2人称「あなた」)でしゃべってる。「今日は何をしようかな。あなたは何をするの?」あ、口笛吹き始めた。上手だなあ。

ここ数日夏のようなお天気が続いていたが、今日は特に暑い。パソコンの画面から店の外に目を移すと、まぶしくて目がチカチカする。女の子もおばさんもおばあちゃんも、キャミソール率非常に高し。ボンッとした胸の谷間をつい目が追ってしまう。まぶしい。

2011年5月16日月曜日

l'echo de la cuisine

知人宅で演奏するため、ダイニングキッチンで家庭内リハ。帰国後のライブでやる曲のアレンジ打ち合わせをしつつ。この部屋の鳴りが好きだ。絶妙の量と長さのリバーブがかかる。床はタイル貼り。流しやコンロのある壁一面の一部にも別のタイル。他の壁はたぶん木とコンクリート。天井に通気口と思われる穴が開いていて、どうやらアパートの屋根の上の煙突とつながっているらしく、雨が降ると雨だれの音がボワ~ンと反響して聞こえる。雨が降り出すときはまず通気口から聞こえる音でそれとわかる。煙突の上に鳩が止まると、鳴き声がボッホーボッホーとこれもまた通気口から響いてくる。

2011年5月12日木曜日

pas "pas ca va"

トゥール市内では珍しく昼休みも取らず日曜日も空いている近所のエピスリ(食料品屋さん)。店主のおじさんはフランス語をほとんど話せない私にもいつもニコニコしてくれて、とても感じがいいのだが、今日初めて話しかけられた。「あなたは日本人ですか?どお?大丈夫?あなたの家族やなんかは。」「んーーー、日本は大丈夫じゃないんだけど、私の家族と友達は元気です。どうもありがとう。」「そう、それはよかった。見た目だけだと日本人か中国人か韓国人か、わからないからね。日本人はgentil(親切な、優しい)だよね。」その後にもう一つ、日本か日本人について何か温かいことを言ってくれた、と思う。聞き取れなかったが。

お店を出てから、「日本は大丈夫じゃない」はちょっとあんまりだったなと、どよーんとした気持ちになる。東北沿岸部が大きな被害を受け、今は日本にとって大変なときだ。でも私の家族と友達は元気だ。そこまでは言えるようにしよう。とりあえず。

2011年5月11日水曜日

イチゴと白アスパラガス

日曜日。マルシェ・ヴェルポーへ。トガゼンの家から徒歩3分くらい。マルシェの八百屋さんのかなりの面積を、白アスパラとイチゴが埋め尽くしていた。先週はもっと白アスパラが多かった、今週はイチゴが台頭してきた、とトガゼン。白アスパラは大きさや形によって少しずつ値段の違うのを7~8種類くらい置いている店もある。冬の生牡蠣みたいに。新潟の枝豆みたいに。緑のアスパラも量は少ないが旬、というかんじで並べられている。白アスパラは高価なものほどぷっくり肥っていて、緑アスパラは皆ひょろっと細長い。

八百屋さんの一角のスペースで、売り場に埋まるようにして演奏しているバンドあり。ドラム1+アフリカ系パーカッション3+大鍋を叩きながら歌ったり叫んだりする男1。隣のテーブルでは女の子がものすごい量のトマトと何かのハーブを刻んでいる。どうやら、演奏しながら大量のスープを作る、という企画らしい。演奏はとても素敵だった。白い人黒い人入り交ったアフリカン・リズム。トガゼンがじゃがいもを買いにいっている間じっと聴いていたら、大鍋叩き男に腕をつかまれて、バンドの中に連れて行かれてしまった。ジャンベの人の隣に座らされる。「Ca va?」「Ca va.」しょうがないのでにっと笑う。ハイハットだけのリズムに合わせて、ジャンベの人の即興の歌が始まった。それから、木琴の涼しげな音。空は青空。


じゃがいもを下げたトガゼンが戻ってきて、「あ、ダンナが戻ってきたから彼女を返さなくっちゃ」というようなことをたぶん言って大鍋叩き男、私のほっぺたにブチュー。「日本人ですか?サヨナラ~」「さよなら。ありがとう。よい一日を!」あのあと、どんなスープができたんだろう。家に帰ってからも、アフリカン・バンドの音は午後しばらくのあいだ聞こえていた。


白アスパラは、ソース・ムースリーヌ(source mousseline)という泡立てた卵白が入ったフワフワのマヨネーズソースで頂きました。お刺身みたいな味。










2011年5月10日火曜日

くちぶえ鳥


土曜日。一日中家で仕事。窓を少し開けているので、鳥の声が聞こえてくる。日本のと違う鳥の声。ピューイピューーーピュピュピューイピュ~ゥ。ひと際よく通る美声は、アンリ・サルヴァドールが口笛でまねしてるあの鳥だ!「Maladie d’amour」のイントロ。鳩は日本のよりも太いダミ声で、えばったおじさん風。

日曜日。夕方、サン・ガシアン大聖堂の裏のお屋敷街を散歩しているとき、美声の主を目撃!まっくろくろすけで黄色いくちばしのblackbird。お屋敷の高い屋根の上でひとしきり鳴いたあと、歌い終えましたからねというかんじで飛んで行った。まっくろくろすけ鳥は2年前にイギリスのプリマスでも見た。ビートルズの曲に出てくるblackbirdってこれかあ、とそのときも感動したのだったが、こんな美声だったとは知らなかった。Blackbird---日本語名はクロウタドリ、フランス語名はmerle(男)。

土曜日の晩ごはんは、トマトのファルシーとタルティフレット(ジャガイモのグラタン)。トマトのファルシーはフランスお惣菜屋さんトレトゥールの定番で、南仏出身の料理。いろんなものを詰めるらしいが、この日詰められたのは豚肉、かなり粗挽き。ハーブとかも入っているらしい。オーブンから出たての熱々は、トマトの果汁と豚の肉汁がじゅっとなってショーロンポー的旨味があり、美味しかった。

2011年5月8日日曜日

白いふわふわしたものがたくさん舞っている。


お昼休みの時間を狙ってフランス語学校Tours Languesを訪ねるつもりが、寝坊してしまったので延期することにして、街中をぶらぶらする。2か月ほど前からトラム(路面電車)の工事が始まっていて、トゥールの街はいま落ち着かない。駅前のマクドナルドの脇でもショベルカーがドドドドドドとけたたましい音をたてていた。日本からの仕事、インターネット接続のよいマクドナルドでするつもりでいたのだけど、時間によってはうるさくて無理かもしれない。

9月にトゥールで買ったHOHNERの安ギター、買ったお店に売って帰ると心を決めて来たのだけど、触っているうちに揺らいできた。最近練習しているアンリ・サルバドールの曲の、ウクレレを弾くように人差し指を上下させて8分音符を刻む奏法、もったりしてなかなかうまくいかなかったのが、このギターだとシャカシャカシャカと爽やかな音が鳴ったから。ギターではなく乾いた気候に因るものかもしれないけれど。普通のギターより少しだけ小さいサイズも、ボディの明るい色も気に入ってるし。うーん、、、

写真は、街の目抜き通りRue National辺りのロワール川。川は橋の下のところで少し段差になっているから滝のような音がしていて、気持ちがよい。橋を渡ってしばらく北に歩いたところに、トガゼンがスタージュ中のトレトール(お惣菜屋さん)「三匹の子豚」がある。川沿いをしばらく歩く。タンポポの綿毛みたいな、羽みたいな、白いふわふわしたものがたくさん舞っている。粉雪みたいにも見える。街中にも舞っているのだけどこっちの方が多いみたい。植物の何かだと思うのだけど、正体はまだわからない。

眉間に斜めの皺がくっきり出来ていた。

朝7時前にうちを出る。出がけに慌ただしくしてしまい、鍵をちゃんと閉めたかどうか電車の中で不安になり、大家さんに連絡して確かめてもらう。鍵は閉まっていたとのこと。飛行機は全日空。いちばん安かったので。日本の飛行機で外国に行くのは初めて。メニューの写真を見てから食事を選べるなんて!映画やドラマの種類がたくさんあって、夢中で観たので寝る暇なし。ごはんのときは松田優作探偵物語。王様のスピーチとMidnight DJという韓国のサイコスリラー映画が特に面白かった。Midnight DJは息つく暇ない展開。終わった後トイレに入って鏡を見たら、眉間に斜めの皺がひとつ、くっきり出来ていた。

シャルル・ド・ゴール空港に着き、TGVに乗るためターミナル1からターミナル2へCDGVALというおもちゃみたいな電車で移動する。車内に貼ってある路線図、薄いオレンジ色と水色を使ったデザインの、垢ぬけていることよ。楽しい気分になる。半ガラス作りの国鉄SNCFのロビーには、光がさんさんと注いでいる。足をテーブルの上に投げ出して新聞を読む人、クロスワードパズルをする人、おしゃべりに夢中の家族連れ・・・フランスのTGVは日本の新幹線と違って本数が少ないから長時間待たなくてはいけないのだけれど、わたしたち待ってる間も楽しんじゃうもんね的ヴァコァーンス的空気がもや~っと立ち上っていた。ビジネスマン風の人もけっこうたくさんいるのではあるが。ああ、フランス。

途中鉄橋の上で長時間止まったり、すこーしずつ遅れながら、電車は無事にトゥール駅に到着。夜9時頃。まだうっすら明るい。約2カ月半ぶりに会うトガゼンは、むく犬みたいな髪型になっていた。準備してくれていた晩ごはんをありがたく頂く。タブレ(クスクスのサラダ)、パテ・ド・カンパーニュ、舌平目のムニエル白いバターソース。パテ・ド・カンパーニュまででお腹がいっぱいになってしまったので、舌平目は翌日に作ってもらった。写真がそれ。舌平目は臭みがなく柔らかくとろっとしていて、白いバターソースには白ワインヴィネガーやレモンが入っていて爽やか。美味しかった。

2011年5月3日火曜日

びよ~んとならなかった、、、




アスカちゃんがやって来て、アリゴ、ローストポーク、フォカッチャをいっしょに作って食べる。
例によってワインをちびちび飲みつつ、例によってガールズトーク爆裂。
アリゴ(aligot)というのはフランスのオーヴェルニュ地方のチーズとじゃがいもを使った料理で、フォカッチャもじゃがいもを使うので、なんとなくイモイモ・デー。大家さんちのローズマリーをチョキンと頂戴して、ポークとフォカッチャに使う。

アリゴの出来上がり、両手をいっぱいに伸ばしてもびよ~んと切れないアレ、をもちろん想像してわくわくしていたのだけど、出来上がったものはねっちょりしたやや黄色いマッシュポテト。ほとんど伸びず。むー。不完全燃焼。敗因は、いもが茹であがった時点で話に熱中したため冷めて、裏ごしがうまくいかなかったことか?生クリームを省いたことか?アリゴに使うトム・フレーシュというチーズを取り寄せた神楽坂のチーズ専門店アルパージュの説明書きには、トム・フレーシュは季節により伸びにくいことがありますので、そのときにはモッツァレラを少し混ぜてください、と書いてあった。いっそのこと全部モッツァレラで作った方がびよ~んはうまくいくような気もする。

私は常日頃、フォカッチャのことをフォッカッチャとついつい発音してしまうのであるが、アスカちゃんも同じだと聞いてとてもうれしくなった。あと、イタリアのアイスクリームのカタカナも難しい。ジュラードだったかジェラードだったか。それは私だけ、か。

一人暮らしもあともう少し。地震の直後はたいそう心細かったが、終わるとなると愛おしく、噛みしめるように暮らしている。

2011年5月1日日曜日

浅草へ


友達の友達の北アイルランド人ご夫妻の東京観光に半日ほどお付き合いすることになり、浅草へ。雷門で待ち合わせ。

浅草といえばこれまでジャパン・パーカッション・センターと神谷バーくらいしか知らなかったのだけど、雷門から浅草寺までのエリアは、日本がぎゅっと凝縮したテーマパークみたいになっていることだなあ。shinto shrineはないの?と聞かれたので、あとは鳥居があると完璧なのかもしれない。探せばどこかにあったのかもしれない。

参道にびっしり並ぶおみやげもの屋さんの日本グッズはほぼ見るだけにして、聡明な友達の案内で浅草ROX内の100均ショップへ。土地柄か日本グッズの品揃えすばらしく、扇子もたくさん種類があったし、浮世絵風の絵がプリントされた手ぬぐいや、招き猫、欲しいとおっしゃっていた日の丸の旗まであった。

北アイルランド人ご夫妻の日本旅行は地震のずいぶん前から決まっていたことで、友達は一時期、キャンセルした方がいいんじゃないかとずいぶん心配したけれど、ご夫妻は、あなたが大丈夫なら大丈夫だから行くと、おっしゃった。私たちには不安はない。なぜならば神様が守ってくださるから。できるだけたくさんの人に会って、落ち込んでいる人がいたら励ましたい、と。ご夫妻は熱心なカトリック教徒である。1週間ほど前に初めてお会いして夕食をごいっしょしたとき、60年代70年代カトリック対プロテスタント紛争のお話も、少し聞いた。日本は今たいへんなときだけど、私たちにも辛いときがあったのよ、と。

浅草の後は銀座に移動してウィンドウ・ショッピング。有楽町駅近くのデパートは夜9時近くなっても煌々と明るく、店員は満面の笑みで接客し、買い物をしてプレゼント用だと言えば綺麗にラッピングしてくれて人数分の手提げ袋まで付けてくれる。東京というところは、ほんとうにたーーーくさんの品物が狭いスペースにびっしりと置かれていて、短時間で買い物をするには良い場所だなあと思う。彼らの目にはどんな風に映っただろう。地震と津波で大怪我をした東北沿岸も、取り返しのつかない事故が起こってこれから長い時間かけて痛む福島の原発周辺も、ものがあふれる東京も、全部私たち日本人の体の一部。

2011年4月11日月曜日

0.5分咲き


暖かい一日。
テレビでは桜開花のニュースをやらないけれど、そろそろ咲いた頃かと気になり始め、
仕事を中断して、トトトトと階段を上って桜のある公園へ。

いくつかの木の先っぽの方が少し、ポロリポロリ開いていました。
まだ一分も咲いていない。

今年の桜を見ることなく
津波に流された人たちのことを想う。
心の中で手をあわせる。
私がこうして、
今年も桜を待っていることの不思議。
家族や友達、愛する人に会うことのできる不思議


今年は企業の花見も自粛ムードになりそうだとか。
都内の名所の桜を、静かに鑑賞するチャンスかもしれませんね。


先週末友人宅で売ってもらったエルヴェ・モルヴァンというフランスのポスター画家の画集本、
もったいないので毎日少しずつページを進めている。前書きの文章もとても好き。

「・・・人は現実の世で、ほんのささやかなものから無限に大きなものまで、さまさまな幸せと悲劇に
遭遇しますが、すばらしいのは、たとえ実際に現実を逃れることは完全にはできないとしても、
現実の意味を変えることは許されており、それが心の健康にもよいということです。・・・」

「・・・それは、街頭で、『生まれたときから目が見えません』という札を持っている視覚障害者を見て、
その札を『春はもうじき来ますが、私が見ることはないでしょう』と書きかえた、あの無名の人のセンスに
通じるものでした。・・・」
 
(Excerpt from 「フランスポスターデザインの巨匠エルヴェ・モルヴァン Herve Morvan」 ビエ・ブックス)

私もそんな音楽がやりたいと思う。

2011年3月15日火曜日

避難所の皆さんに段ボールを!

昨夜、新潟に住むトガ母よりメイルあり。

「東北大地震の避難所に、寒さ対策のために、
ダンボールを届けることを提案したいのよ。
ダンボールの箱の中に入るとかなり暖かいのを体験してるのだけど。
何か大勢の人の目に着くようなネットに載せたいのだけど、どうしたらいいのかな。」

提案文を作って送ってもらえれば、現地で救援活動をしているボランティア団体を調べてメイルすることはできますよ、とお返事して。
今朝、7団体と、ボランティア担当補佐官に任命された辻元清美さん公式サイト宛にメイルしました。

以下、トガ母の提案文です。

*******

避難所のみなさんにダンボールを

寒さに震えているみなさんに、ダンボールを使うことをお勧めします。
ダンボールの箱の中に入ると、とても暖かいのです。
野外の夜に私は経験したことがあります。
救援物資の入ったダンボールを活用されますように。

ダンボールは新品である必要はありません。
届けられる方は届けてあげませんか。

新潟より、応援の気持ちを送ります。 

富樫

*******

以下、被災地で実際に救援活動をしている、またはしていると思われるボランティア団体のリストです。
調べているうちに、翻訳のボランティアがあることも知りました。
多くの団体が、東日本大震災義援金を募集しています。

・・・・・・

公益社団法人 CIVIC FORCE
(代表:大西健丞)
http://www.civic-force.org

とちぎボランティアネットワーク
http://www.geocities.jp/tvnet1995/

日本災害救援ボランティアネットワーク
Nishinomiya@nvnad.or.jp

ピースウィンズ・ジャパン
(代表:大西健丞)
http://www.peace-winds.org/

レスキューストックヤード
(代表:栗田暢之)
http://rsy-nagoya.com

ADRA Japan
(代表:曽根田健二)
http://www.adrajpn.org/

グッドネーバーズ・ジャパン
(代表:窪 誠)
http://www.gnjp.org/

・・・・・・

恐ろしいこと悲しいこと不安なことが続く中、トガ母の元気に心打たれました。

元気だしていきましょう。

bise(ビズ)について


帰国してから3週間が経ち、久しぶりの友人と再会する機会もポツリポツリとあるのですが、懐かしい顔を見ると、抱きついたりビズをしたりしたい衝動にかられる私は、かなりフランスかぶれ、南ヨーロッパかぶれしていると、言えるのでしょうね。衝動にかられるだけで、実際にはしないんだけど。

bise [bi:z] ビーズ
(頬にする)キス
ープチ・ロワイヤル仏和辞典ー

これまで、ブラジル、スペイン、ポルトガル・・・ラテンの国を旅行したとき、このビズをする機会がごくたまにあったのですが、なんだかよくわからずアワアワしながらそれをやっていました。そのときはお互いがタコの口のようになるのだとばかり思っていたのだけど、どうやらそうではなく、ほっぺたとほっぺたをくっつけてチュ、という音をだすのが、ビズなんですね。フランスの方は、この「チュ」の音がとても大きい。このほっぺたくっつけヴァージョン以外にも、男性が女性のほっぺたにチュ、としてくれるビズもあって、スペイン人や南仏出身らしき男性のビズはこのタイプでした。

トゥールでは左右2回ずつ計4回、パリでは3回するんだよ、教えてくれた人がいましたが、数の決まりは特にないように見えました。たいてい、右の頬から左の頬へ、という順番なのですが、ときどき左からなさろうとする方がいて、そうすると、口と口がぶつかりそうになりおっとっとっと、ということになります。

友人同士に限らず、買い物をしたときやホテルのフロントなどでも、互いの心が通じ合ったとき、別れ際に握手をしたり、ビズをしたりすることがありました。触れることで、互いに1段近づくようなかんじがします。ビズの習慣、最初慣れないうちは戸惑うばかりで苦手でしたが、だんだんと好きになりました。

フランス人の明るさの秘密は、握手やビズなどのスキンシップにあるのではないかな、と思います。例えば、落ち込んでいるとき、または、あいつ超むかつく~とか思っている相手とでも、習慣的惰性的にほっぺたをくっつけて相手の体温を感じ、匂いを感じることで、ま、いっか、という気分になるのではないかと。人に触れる、ってそういう効果があるんじゃないかな、と。

とはいえ、ビズがあまり好きではないフランス人もいるようで、なぜかといえば、毎日のように会う相手ともいちいちするのが「めんどくさいから」なのだそうで、その気持ちもわかる気がします。

写真は、2月6日のロワール川。左手の陸地は中州です。沈む直前の太陽に照らされる吊り橋。はるか昔に両親が購読していた「暮らしの手帳」の中の、グリム童話だったか何だかのお話の、挿絵の影絵みたいだなあと思いました。

2011年2月18日金曜日

トゥール駅前のマクドナルド


先週無事に帰国しました!

成田空港に着いて、ロビーの椅子に座って横浜駅行きのバスを待っていたとき、
隣には卒業旅行から帰ってきたと思われる若い女の子が二人。
聞き耳をたてると、会話が隈なく全部聞きとれます。がんばらなくっても。
足元からじわーっと緩んでいくような感覚。

外に出たら快晴。
2月の青空ってこんな薄い青色だったっけ?
乾いた風の中に、干し海老みたいな匂いが混じっています。
えびせんべい食べたのだあれ?

制服を着たバス会社の社員が、90度まで深く頭を下げて、
去っていくバスを見送っています。
バスもタクシーも、今磨いたばかりみたいに、ピッカピカ。


・・・・・・・

トゥール駅前にあるマクドナルドには、インターネットをするためよく行っていました。
シックなデザインの外壁。著名人のイラストと(たぶん)彼らの名言のコラージュが壁一面にびっしり貼られています(店内の内壁とテーブルにも)。
私の知っている顔は、セルジュ・ゲンズブール、ウッディ・アレン、それからマリリン・モンロー。
よくオレンジジュースの小サイズを注文していましたが、1.60ユーロのときと1.80ユーロのときがありました。レジを打つ人によって値段が違う???
エスプレッソやカフェオーレなどのコーヒー類を頼むと、袋に入ったショコラが付いてきます。ココアをまぶした小さなチョコボール。
私が帰国する少し前には、山羊のチーズやブルーチーズをはさんだ高級ハンバーガーが新発売されていました。試さなかったけれど。

マクドナルドの前で主人を待つ犬。

大通りで物乞いをする人達が、よくこんな黒い犬を連れていました。
中には20代に見える若者もいて、身なりは小奇麗。スカーフを素敵に巻いていたりします。
彼らは職業として物乞いを選んでいる、ということなんでしょうか?
ロワール河の土手で、犬を連れた彼ら5、6人が集まっておしゃべりしたり、ビールを飲んだりしているところも見かけました。とても楽しそうでした。

2011年1月11日火曜日

le nuage

日本に帰るまでの4週間だけフランス語の学校に通うことにして、今日が初日。
シーズンオフで学生の数が少なく、私と同じ初心者レベルの学生がいないため、超破格の値段でマンツーマンレッスンを受けられることに。

先生を待っている間に、教室の窓から見えた茶柱みたいな飛行機雲。

お見受けしたところ、情熱的で熟練した女性教師ヴィルジニ先生は、初心者の私に対して容赦なく次々と質問されます。もちろんフランス語で。ひぃぃぃぃぃぃ。2時間のレッスンは長かった。これから毎日、もつだろうか?

フランス語が少しわかるようになったら、まずあの曲に挑戦して、それからあの曲、その次は・・・夢はすぐそこ(たぶん)。

2011年1月8日土曜日

3匹の子豚

昨年末、トガゼンが修行中のトレトゥール(お惣菜屋さん)「Aux Trois Petits Cochons」に行きました。

aux trois petits cochons = 3匹の子豚

写真を撮っている私の後ろには、幾種類ものパテ、テリーヌやリエットがあり、右手がシャルクティエ(お肉屋さん)コーナーです。左手にはワインやチーズが棚いっぱいに並べられています。あとはパン屋さんで焼きたてバゲットを手に入れれば、素敵な食事を楽しむことができるというわけです。

クリスマスやお正月は家族と家でゆっくり過ごすというフランス人。トレトゥールは1年中で最も忙しくなるのだそうです。私が買い物をしている間も、地元の方らしきお客さんが次々にやってきて、その度マダムは、ペーチャクチャクチャクチャと賑やかに接客されていました。

祝日12月25日も大忙しだったみたいですが、仕事の後、マダムがお店のクリスマス料理をトガゼンに持たせてくださいました。シャポンと栗の煮込み、フォアグラ、ブーダン・ブラン(トリュフなどのキノコが入った白いソーセージ)。煮込みは家庭的な温かい味、ブーダン・ブランは色と食感がどことなく日本の蒲鉾を思わせるところがあり、懐かしくめでたい気分になりました。フォアグラは年末年始の定番ごちそうみたいです。スーパーにもたくさん並べられていました。円柱型に加工されたものは比較的安価で、10cmくらいの長さのが6ユーロくらいからありました。

シェフのムッスュー・ルコントはお茶目な人柄の方のようで、ある日は、牛肉のでっかい塊を小脇に抱えて厨房の通路を突如走りだし、「Zenya, tu connais? Rugby. (ラグビーだぞゼンヤ、知ってるか?)」とおっしゃったとか。(フランス語間違ってたらどなたか添削シルブプレ!)駄洒落もときどきおっしゃるそうで、でも外国語のジョークって難しいですよね。トガゼンがキョトンとすると、ホワイトボードに書いて説明してくださるのだそうです。

そんな素敵なルコントさんのお店「3匹の子豚」は、トゥール市内の中心を垂直に伸びる大通りRue National(ナショナル通り)でバスに乗り、ロワール川を超えて3つ目のバス停降りてスグ、左手にあります。トゥールにお越しの際はぜひお立寄りくださいませ。

今年もよろしくお願いします。


遅ればせながら、明けましておめでとうございます。
2011年もみなさまにとって良い年になりますように!
昨年中はたいへんお世話になりまして、ありがとうございました。
あんなこと、こんなこと、音楽を通して、それ以外でも、たくさんの出会いもありました。
今年もマイペースで歌を作ったり、いろんなミュージシャンと演奏したり、していきたいです。

写真は、元旦の日に撮りました。普段は夜更けまで賑やかだけど元旦の午後はひとっこひとりいないコルヴェール通りにて、ホーミーをするトガ氏。
久しぶりに聴くトガ氏のホーミー。なんとまあ、ホーミー(倍音)部分にいろんな高低をつけて歌のように鳴らすことができるようになっていて、驚きました。

私も負けじと、ロワール川に向かってウ~イ~ア~イ~とやりました。濁流の流れ速く、猛々しく雄大なるLa Loire。私のホーミーは、自分ではホーミー音を鳴らしているつもりだけどなかなか他人にわかってもらえない、というレベルなんですが、それでも、元旦らしい清々しい気持ちになりました。

お正月過ぎまではとても寒かったので長時間出歩くことはあまりなく、家でじっとしていました。食べて飲んでないときはフランス語の独学習をするかギターを弾くか。トゥールの楽器屋さんで買ったバッキングオケCD付ジャンゴ・ラインハルトのタブ譜で、「Minor Swing」をジリジリと練習しています。15フレットやら17フレットなるものが存在したのねギターには!ということを、学習中。

トガ氏のアパートにはインターネット接続もテレビもなく、娯楽といえばロンドンで買って来たDVDを繰り返し観るか、あとはラジオだけ。最近は「ノスタルジー」というチャンネルがお気に入りです。60s、70s、80s、90sの主にフレンチポップス、ときどきアメリカやイギリスのポップス。おもちゃ箱をひっくり返したような選曲で楽しいです。キュンとくるフランス語の歌がたくさん流れます。今フランスで活躍している女性シンガーZazのことは、Tourローカルのラジオチャンネル「France Bleu」で知りました。私がフランス滞在中にライブはないみたいで、残念です。日本で観れるといいなあ。